Tuesday, November 4, 2014

驚愕の谷

先日「ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古」を見たら、
やっぱりどうしても彼の舞台が見たくなり。
パンフレットを読んでいたら、なんと11月に来日公演が控えているとのこと!
慌ててチケットを取り、東京芸術劇場まで行って来ました。

今回の作品は「驚愕の谷」。
フェスティバル・トーキョーの招聘作品です。
唯一の休日公演ということもあってか、
オープニングナイトは満席で、随分立ち見も出ていました。

あらすじが紹介されているところが少ないので簡単に・・・
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主人公サミーは共感覚の持ち主であり、また驚異の記憶力の持ち主。
ある日、勤務していた出版社の編集長にその能力を見せたことで、
彼女は認知科学の研究室に足を運び、
人生を一変させることとなる。
 人はどのように物事を理解し記憶するのか。
忘れるとは何なのか。
そしてそのことが人の人生においてどのような意味を持つのか。
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極限までミニマムに抑えた舞台装置を使いながらも
鮮やかでスムーズな場面転換はさすがとしか言いようがない。
たった3名の役者で物語を進めるため、
自ずと一人一人が複数のキャラクターを演じることになるが、
それでも各キャラクターが混乱することはありませんでした。

また、先の映画でも役者のインスピレーションの源、
そして観客のイメージの足がかりとして
大きな存在感を発していた音楽家の土取利行氏。
ジャンルに捉われない様々な楽器を用いての生演奏は、
より深い緊張感を誘い、片時も舞台から目を離すまいとさせました。

一つ残念だったのは観客を舞台に招いたときのこと。
異文化の交流を楽しむピーター・ブルック氏らしい演出ではあったものの、
英語しか話せない役者と英語のわからない観客のやり取りは、
それまでピンと張っていた緊張の糸を切り、
それまでの整ったテンポはどこへやら、
果ては役者までが焦りに引きずられ役を見失ったようでした。

しかしながら、全体としては満足できる内容であったことには違いありません。
彼の舞台が見られて良かった。
欲を言えば彼の演出するシェイクスピアも見たいです。
あと、東京芸術劇場のプレイハウスは後ろの席でもとても見やすく、
音もきれいに聞こえて素晴らしかったです。

 フェスティバルトーキョーが終わる前に、もう1作品見たいなぁ・・・
と思いつつ既に別の狙っていたイベントに行き損ねた私です。

Monday, November 3, 2014

ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古 Peter Brook: The Tightrope

多忙を極めた夏があっという間に過ぎ去り、
気付けば今年もあと2ヶ月。
私の秋は芸術の秋。
再び演劇への愛が盛り上がっている今日この頃です。

そんな中見に行ったのが、現在シアター・イメージフォーラムで公開中の
ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古」。
とても興味深く、面白く、
今年見に行った中で一番の集中力を要した映画です。
お陰で終わる頃には空腹で倒れるかと思いました。笑

「なにもない空間」を創造する演出家、ピーター・ブルック。
あの蜷川幸雄氏や野田秀樹氏が若い頃に見て、目標とした人物です。
彼の演出の根源とも言える、
トレーニングやワークショップに密着したドキュメンタリーが公開されました。
見に来ているのはやはり、演劇人っぽい人ばかり。笑
(演劇にさほど詳しくない友人に見に行く?と聞いたら珍しく断られました)

映画の原題にもなっている、綱渡りのエクササイズは
見るのは簡単、やるのは非常に難しい。
感覚の鈍い足の裏に集中力を保ち、
そこに本当に綱があるとのリアリティを自分自身の中に持ち続ける。
さもなければ、綱渡りのモノマネに陥り、
手をただバタつかせてみたり、
綱の上にいるはずが随分大きなエリアを歩いてしまったり。

参加しているメンバーは皆、経験豊かな役者たちばかりですが、
そのなかでもインドの舞踊家のシャンタラ・シヴァリンガッパ氏は別格。
やはり普段から裸足で踊る訓練を積んでいるからか、
足の裏の感覚は人一倍鋭いように見えました。

芝居とは普通を演じることだとブルック氏は言う。
そしてその普通を作り出す為には、役者は日常をよく観察し、
分析した上でそれをアウトプットする能力を持たなければならないのだ。

自分も稽古場にいて、他の団員のエクササイズを見ているような気分になり、
見れば見るほど自分でもやってみたい、
演劇の稽古って難しいけれど、とっても楽しいものだったな、
という気分になりました。
演じるとは何なのか、本気で考えたい人は絶対見るべき。
私ももう一度見に行きたいなー・・・。