Monday, April 14, 2014

金閣

頭を壁に叩きつけられ、心臓をえぐられるような作品。純粋でありすぎた男の物語。
この物語はどこまでが真実で、どこからが三島由紀夫の妄想なのだろうか。
もしくは、これは別人の皮を借りた彼の私小説なのだろうか。

もうすぐ使えなくなるU-25チケットを握りしめ、初めての赤坂ACTシアターへ行って参りました。
(U-25チケットというのは25歳以下の若者が買える割引チケットで、座席指定は不可。その日に残っている座席を先着順で割りふってもらえる、というチケットです。)
今回はラッキーなことにS席頂きました!かなり嬉しい。


金閣」は柳楽優弥さん主演、宮本亜門さん演出で、
ニューヨークのリンカーンセンター・フェスティバルで好評を博した作品です。
(その際の主演は森田剛さんですが。)
原作は言わずもがな三島由紀夫。

金閣の精やコーラスの演出に舞踏が取り入れられていたのは、
やはり海外で好評を得た作品だな、という感じ。
金閣の精がバックライトで登場するシーンは
「ジーザス・クライスト・スーパースター」かと思いました笑

また、赤坂ACTシアターでの観劇は初めてだったのですが、
設計の素晴らしさに感動しました。
昨年「春琴」を見たときに残念だった、
コンサートホールでは十分なライティングやサウンドシステムを使えない、といったことは全くなく、
今回の公演では最新の劇場の圧倒的な音響とライティングを楽しむことが出来ました。
(とは言いつつ、ブロードウェイの歴史を感じさせる絢爛豪華な劇場も大好きです。)

主人公、溝口が悩みもがき苦しむ場面での唸るような音は、
観ている私の腹の奥底から響き渡り、息苦しくなるほどでしたし、
主人公が目を背けたくなる眩しさは、私も目が眩み目を開けていられないほどでした。
終演後、お年を召した方々は「我々には衝撃が強すぎる」と仰ってましたが、
それこそがこの演出のミソでしょ。
いつの時代も、「今時の若者は~」と言われ、
若者の苦悩や融通の利かなさ(純粋さとも言うのかしら)は年長者から呆れられ疎まれ、
受け入れがたいものである、ということ。

溝口の行き詰まりは言葉が違うだけで、現代のニートと何も変わらない。
ただ金閣を見ているか、ネットを見ているか、との違いだけ。
現実から逃避したくて、もういっそ無茶苦茶にしてしまいたくて、
未来を見据えて妥協を覚えることが怖い。

「古典は常に新しい」
私の劇団の先生の言葉を思い出した、そんな芝居でした。